
DESIGNTaro Kiguma
愛媛県・松山市に2026年12月19日、「⽯本藤雄デザインミュージアム」が開館する。日本でも人気の北欧ブランド「マリメッコ」や「アラビア」で長年活躍したデザイナーでありアーティスト、石本藤雄の約60年にわたる創作の軌跡を集大成する常設の美術館だ。「⽯本藤雄デザインミュージアム」は、建築家の伊東豊雄が設計し、アートディレクターの色部義昭がロゴおよびVIを担当。開館に合わせて、石本の半生と創作の歩みをたどる開館記念展「いしもとふじお物語 I ―あしもとへのまなざし―」が開催される。

「⽯本藤雄デザインミュージアム」外観パース。
設計は建築家の伊東豊雄。伊東は石本作品に通底する「自然へのまなざし」を踏まえ、自然の中で作品に対峙できるかのような空間を構想した。建物は地上3階建てで、1階から3階までを貫くような木柱が特徴だ。約50年にわたり自然と深く共存する、フィンランドで生活し表現を続けてきた石本の歩みと生き方に敬意を表し、来館者をまるで深い森の中へと招き入れるかのような温かみのある空間デザインになる予定だ。
館内は、1階のエントランスからスロープを上がり、螺旋の回廊を進むと光が降り注ぐ中庭が現れる。2階の中庭には石本が選んだ樹木や草木が生い茂り、本ミュージアムのために特別制作された大型の新作陶芸作品(《オオイヌノフグリ》と同モチーフ)が常設展示される。最上階の3階には、高さ5.5mの柱が伸びる開放的な空間「Room of Ilo(喜びの部屋)」が広がり、ダイナミックな展示空間を実現している。

《オオイヌノフグリ》2018 愛媛県美術館での展⽰の様⼦。Photo_GABOMI.

「⽯本藤雄デザインミュージアム」3階内観パース。

⾊部義昭による「⽯本藤雄デザインミュージアム」のロゴ。
ロゴおよびVIは、アートディレクターの色部義昭(日本デザインセンター)が手がけた。色部は、石本が創作活動の中で追い求めてきた「自然」「静けさ」「かたち」へのまなざしを視覚言語として構築した。ロゴは、石本の陶芸やテキスタイル作品に繰り返し描かれてきた果物や花に見られる“つぶれた丸”のかたちを着想源としている。ロゴを構成する文字の縦横比(約1:0.85)は実際の石本作品の比率から導き出されており、文字の末端には果物のヘタを思わせる造形を取り入れることで、一つひとつの文字に生命感を与えている。優しげな文字デザインは、石本作品の持つ不均一さや余白、整いすぎない心地よさと呼応し、ミュージアム全体の理念を象徴している。
開館を記念し、2026年12月19日から2027年5月30日まで、開館記念展「いしもとふじお物語 I ―あしもとへのまなざし―」が開催される。本展は、アーティストとして、またひとりの人間としての石本の歩みを多角的に振り返る企画だ。本展はミュージアムの2階と3階を舞台に、石本の人生における3つの時代を時系列で辿る。
まず、創作の原点であり焼き物の町である愛媛県砥部町で過ごした幼少期を描く「砥部時代」では、身近な草木や道具に触れた体験と豊かな感性の芽生えを紹介する。続いて、1960年代の高度経済成長期に先端的な芸術やデザインに触れ、知識と経験を蓄積していった「東京時代」を通じて感性が広がる過程を辿る。そして、フィンランドへ渡り「マリメッコ」で手がけた約480点のテキスタイル作品や「アラビア」での陶芸制作を通して国際的に才能が花開いた「ヘルシンキ時代」では、代表的な図案や原画、インタビュー映像などを交えて日本と北欧の美の対話を解き明かしていく。
展示のハイライトとなる最上階の「Room of Ilo(喜びの部屋)」では、ファブリックと鮮やかな花や草木をモチーフとした陶芸作品が空間を満たし、豊かな色彩世界を全身で体験できるインスタレーションが展開される。また、1階のミュージアムストアでは、石本の幼少期の記憶である金平糖や、故郷・愛媛の柑橘ジュース、鯛めし、今治タオルのハンカチなど、1年半以上かけて開発されたオリジナル商品が並び、展覧会の余韻とともに石本の世界観を日常へ持ち帰ることができる。

デザイナー・アーティスト、石本藤雄。Photo_Chikako Harada
⽯本藤雄デザインミュージアム(2026年12⽉19⽇開館)
愛媛県松⼭市⼤街道3丁⽬2-40