東京・渋谷のUESHIMA MUSEUMが、2026年9月2日に館内展示を刷新。第3回コレクション展「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」が開催中だ。「同時代性」をテーマに国内外の幅広い作家を集めた850点を超えるコレクションから、テーマに沿って選び抜いた作品を公開している。

第3回コレクション展『像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する』。

草間彌生「今こそわが芸術のおとづれをまっているワタシ ハナバナしいわが心のナグサメのおとづれをまっている いつ年月をえてしらぬまにわたしは 今日のわたしはさみしかったので空の白いクモみつめたのだ」2021年 アクリル、キャンバス 72.7×91cm
鋭い赤の地に、鮮やかな青の網が縦横無尽に巡る。赤と青の強い対比によって強いハレーションが起こり、網そのものが揺らいで見える。近年のシリーズ「Every Day I Pray for Love」の中の一つで、長年のモチーフである網や水玉に短い愛の詩句が添えられるようになった。長谷川は「情動と生命力、そして彼女自身が持つ幻視、そのパソロジーに対する一つの抵抗」と語る。自らの病理に由来する幻視を、画家人生のすべてをかけて肯定し続けてきた作家にとって無限の網はいま人間愛の表象へと昇華されている。
本展のキュレーターは2025年3月まで金沢21世紀美術館の館長を務めた長谷川祐子。前回に続く起用で、今回はコレクション展示の大部分を刷新した。長谷川は地下から最上階へと至る身体の移動そのものを、ものを「見る」という行為が変容していく物語として編み直したという。大型絵画がつくる情感的な情景から出発し、都市のポップでグリッチなエネルギー、人を通して立ち上がる世界のかたちを経て、最後には像を離れた抽象的な光そのものへ。フロアを上がるごとにイメージはその輪郭をゆるやかに手放していく。

村上隆×ヴァージル・アブロー「Yellow and Pink」2018年 アクリル、キャンバス(アルミフレームにマウント)141.6×120.3cm © Phillips Auctioneers LLC
17世紀イタリアの彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの自画像に村上のキャラクター「DOB君」を重ね合わせている。同じ構図で複数のバリエーションが制作されており、同館には「Carmine Pink and Black」も収蔵されている。「Off-White」の名のもと、自身の人種的な問題とレディメイドのアイコンをデザインに取り込んだアブローと村上との共同制作。オークションでの落札後、村上本人から本作を含むシリーズについて、村上自身がシルクワークを行った旨のメッセージが届いたという。
出品作家は70名を超え、幅広い。マルク・シャガールやアンディ・ウォーホル、ゲルハルト・リヒターといった巨匠から、草間彌生、杉本博司、奈良美智、オラファー・エリアソン、ジェームズ・タレル、ライアン・ガンダーら現在進行形の作家まで。さらに、コートジボワールに生まれ、いまも同地で制作を続けるアブディアのような作家もフロアの文脈をつくる一つとして同じ視点で並ぶ。長谷川はアブディアの絵を「様々な暴力や不安というものがある場所」と語り、こう続けた。「UESHIMAコレクションの興味深いところは、こういう最も、ある意味で人間のダークなところを、コンテンポラリーの手法の延長線上にあるバスキア的な形で絵の中の力として一緒に持ってくるところ」。作品セレクトは長谷川のキュレーションによるものだが、その土台には、オーナーである植島幹九郎の幅広い知識と目利きがある。プライベートミュージアムでこれだけの射程を持つキュレーションに出合える場は希少だ。
6階では、茶の湯の伝統と現代アートの交わりに焦点を当てる取り組みの第一弾として、陶芸家・建築家の奈良祐希がキュレーションした企画展が開かれている。360年以上続く茶陶の名窯「大樋焼」本家に生まれた奈良は、うつわの内側にある「うつほ」が時代とともにどのように変化し拡張してきたのかを、「沈黙」「受容」「変容」「解放」の四章で辿る。樂一入(四代)の黒茶碗から、桑田卓郎、シアスター・ゲイツ、奈良自身の〈Bone Flower〉まで、作品はおおむね年代順に配置されている。6階展示室は「時のうつほ(お抹茶体験)+鑑賞セット」チケットでのみ観覧できる。

樂一入(四代)「黒茶碗 銘『面白や』」
第一章「沈黙」の起点となる一碗。四代・樂一入は、のちに大樋焼を興す初代大樋長左衛門が京都で学んだ師にあたる。茶碗は口を開きながらも、その内側には深く静かな空を抱えている。そこには茶の湯の所作や使い手の記憶、幾世代にもわたって積み重ねられてきた時間が凝縮されている。ここでの「うつほ」は、何も存在しない空洞ではなく、むしろ悠久の時間を内包する時空である。
第3回コレクション展「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」
茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」
開催中
UESHIMA MUSEUM 東京都渋谷区渋谷1-21-18 渋谷教育学園 植島タワー