
DESIGNTaro Kiguma
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、デンマーク・コペンハーゲンで6月10〜12日に開催された「3daysofdesign2026」にて新作のポータブル照明器具を発表した。2025年にミラノデザインウィークで発表した「TYPE-XIII Atelier Oï project」の第2弾だ。

会場には、本物の切り株や石や岩と合わせてプロダクトが展示されていた。
「TYPE-XIII Atelier Oï project」は、atelier oï(アトリエ・オイ)との協業によるもので「一枚の布」と「一本のワイヤー」を融合させたポータブル照明器具のシリーズだ。建築やプロダクトなどさまざまな領域で表現を追求しているatelier oïとA-POC ABLE ISSEY MIYAKEがアイデアを交わして、2025年4月にミラノデザインウィークにて 発表された。
atelier oïがポータブル照明器具としての構造設計を担当、楕円形のワイヤーで布を支える構造を提案した。A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、服づくりに活用されているリサイクルポリエステルをベースにした「Steam Stretch」を照明のシェードに用いることにし、今までに無かったポータブル照明器具として完成した。「Steam Stretch」は一枚の布にデザイン要素をあらかじめ織り込み済みで熱を加えることで立体的なプリーツになる素材だ。ワイヤーフレームがプリーツ状のシェードを数か所で支えることにより、独特で彫刻的な造形となった。
今回、3daysofdesign2026で発表されたものは「WOOD」と「STONE」をテーマとし、シェードに色がついたバージョンだ。ベージュやグレー、それぞれ4色で合計8色がラインナップされている。中にはかなり赤く感じる色や黒く感じる色もある。
「自然の木や石のイメージからシェードに色をつけました。黒い『STONE』は夜になると、本当の暖炉の中で炭が燃えているかのようにも見えます。黒い照明というのは、今までにあまり無かったのではないでしょうか? 赤い『WOOD』のほうは、溶岩や縄文土器のイメージにも重なります。いずれも点灯していないときにもオブジェとして飾って頂けると嬉しいです」(デザイナー 宮前義之)
ポータブル照明としての技術面はアンビエンテックが支えている。
「布のシェードに光を透過させて、光源の色も存在感があるようにするとなると既存のアンビエンテックで使用している電源とLEDでは物足りないことがわかりました。そこで強力な水中ライトの技術を応用して、新規のシステムとして開発しました。バッテリーは、アンビエンテックで人気の「Turn」と比較して2倍の容量を搭載、色温度は2600K(暖色系)から6000K(白色系)。4段階に調光することができます」(アンビエンテック 久野義憲)
今年の3daysofdesign2026出展に対して、デザイナーの宮前義之はこう語った。
「このプロジェクトのコンセプトをしっかりと伝えて、実際のライフスタイルの中でどのようなシーンを作れるのかという点をみなさんに見てもらいたいなと思いました。昨年の3daysofdesignに来て印象に残ったのは、歴史的な家具ブランドが丁寧にマスターピースの哲学を語っていて、新製品の訴求が中心の他のデザインイベントとは一味違う点でした。私たちイッセイ ミヤケも一枚の布の可能性をじっくり追求しているという意味では、もしかするとこのイベントがすごく居心地のいい場所になるのかもしれないと思いました。木や石の質感からテキスタイルを表現したのも、自然豊かなデンマークからインスピレーションを得たからです」(デザイナー 宮前義之)

シェードに用いられている「Steam Stretch」は、熱を加えることで意図した部分が収縮して立体的で緻密なプリーツとなったファブリックだ。
ブランドのコンセプト「一枚の布」に加えて「一本のワイヤー」という考え方を加えたことにより誕生した、ポータブル照明器具「O Series」。極めて純度の高いコンセプトに基づきながらも、われわれの日常生活に優しく寄り添うやさしさや親しみやすさも感じられる。また、ポータブルであるため、使うシーンや気分に合わせて部屋の好きな場所に置くことができて、実用性も備えている。長年、身体と衣服の関係性に向き合い、リアルな服作りを追求してきたA-POC ABLE ISSEY MIYAKEだからこそ、高いデザイン哲学と実用性の両立が実現したのではないだろうか。
「テキスタイルには無限の可能性があると感じています。椅子や空間、建築などにも応用できるだろうと思っています。しかし、時間をかけてじっくり取り組んで行くべきだと思い、いまチームみんなで手を動かしています」(デザイナー 宮前義之)
今後もわれわれの日常の暮らしを新しい視点で豊かに導いてくれそうな、宮前義之とA-POC ABLE ISSEY MIYAKEのエンジニアリングチームから、まだまだ目が離せない。