ARTTaro Kiguma
不確実な時代にテクノロジーや宇宙、仏教などをテーマにした作家の世界にダイブ!

森 万里子《巫女の祈り》1996年 Mariko Mori Miko No Inori 1996
東京・六本木の森美術館は2026年10月31日より、森万里子の展覧会「森万里子:燦燦」を開催する。本展は作家にとって国内では24年ぶりとなる大規模個展で、30年以上にわたるキャリアから約40点の作品を紹介する。展覧会名の「燦燦(さんさん)」は森の実践の中核にある「光」を象徴しており、本展は光、知覚、意識を通した没入的な空間体験として構成される。
1990年代半ば、森はCG技術を先駆的に使用した「サイボーグ」シリーズを発表し、ポップカルチャーとテクノロジーを融合させた独自のSF的イメージで世界的な注目を浴びた。その後、作家の関心は現代社会への批評から、仏教の宇宙観や死生観、そしてあらゆる生命の繋がりを提唱する概念「ワンネス(Oneness)」へと深まっていった。本展では代表作であり、鑑賞者の脳波をCG映像へと変換して他者との一体感を体験させる巨大なインスタレーション《Wave UFO》が展示される。
さらに、古代のケルトや縄文文化にインスピレーションを得て、宇宙線研究所のニュートリノ観測データと連動してリアルタイムに光を放つ彫刻《トムナフーリ》や、2025年にニューヨークで発表された《お社》なども公開され、現代科学と古代アニミズムを融合させた壮大な思考の軌跡をたどることができる。また、宮古島やリオデジャネイロなどの大自然にパブリックアートを設置する「Faou(ファウ)公益財団」の活動を、大型LEDディスプレイを用いた新作映像で紹介するほか、日々のアイデアスケッチや古代のオブジェクトを紹介する「スタジオ」など、作家の多面的な活動を総覧できる。本展はグッゲンハイム美術館のアレクサンドラ・モンローと森美術館館長の片岡真実が共同でキュレーションを手掛ける。
森万里子からのメッセージ
二十代前半、父の死を機に、命のはかなさに向き合うなかで、人の存在は本当に終わってしまうものなのだろうかという問いが、私の中に芽生えました。まず仏教に答えを求め、宇宙物理の書をひもとき、世界各地の古代都市や祈りの場(ギザ、ラリベラ、アンコールワット、テオティワカン、マチュピチュなど)を巡り、やがて国内外の新石器時代の遺跡(オークニー、ニューグレンジ、井戸尻、大湯)へと思索を広げていきました。そうした探求の中で、科学者やエンジニアと協働しながら技術の開発を重ね、宇宙との結びつきを体験できるような新しい表現を試みてきました。
創作活動を通して、魂という存在があるのなら、それは光であり、より大きな存在の一部なのではないかと考えるようになりました。生と死は物質的な次元では分かれているように見えても、より深い層においては、もともと分断されていないのかもしれません。その感覚は、名づけることのできない内なる光として、作品の中に静かに息づいています。
「森万里子:燦燦」
森美術館 2026年10月31日〜2027年3月28日