
INTERIORTaro Kiguma
フリッツ・ハンセンは、デンマーク・コペンハーゲンで6月10〜12日に開催された「3daysofdesign 2026」にて、日本のオーディオメーカー・テクニクスとのコラボレーションを発表。「SOUND CLUB」と題し、洗練された光と音の空間を構築した。会場では、限定仕様のテーブルランプ「KAISER idell(カイザー・イデル) Luxus 6631-T」とターンテーブル「Technics SL-40CBTFH」をお披露目。今回の企画の狙いについて、CEOのヘンリック・エーレベルク・スティーンスガード氏と、アジア地域CEOのダリオ・ライシェル氏に話を聞いた。
今年のフリッツ・ハンセンの展示は一味違っていた。インスタレーション「SOUND CLUB」として独自の世界観を大胆な空間として立ち上げたのだ。デンマークのフラッグシップショップに隣接する中庭と別棟を広く使い、光・音・プロダクト、さらにはブランドが誇るクラフトマンシップと歴史を融合させたコンセプチュアルな内容となっていた。別棟に設けられた「リスニングラウンジ」と「リスニングバー」では、フリッツ・ハンセンの家具に身を委ねながら、テクニクスが放つ豊かなサウンドを楽しめる空間が広がっていた。

「リスニングバー」には、アーカイブから復刻されたバウハウスデザインを継承するテーブルの上に「KAISER idell Luxus 6631-T」とターンテーブル「Technics SL-40CBTFH」が設置され、ヘッドホンでサウンドに没入することができた。レコードはKim C (Oviduct)とWilliam de Waal (Willone)が作曲したオリジナル楽曲を収録した限定盤。

「リスニングラウンジ」では、オリジナルのポッドキャストシリーズをフリッツ・ハンセンの家具に身を委ねて楽しむことができた。
「家具や照明を見るときは『視覚』、革や木といった家具の素材に触れるときは『触覚』が働きます。ここに『音』(聴覚)が加わることで、空間はより立体的な体験へと昇華すると考えました。今回のランプとターンテーブルを組み合わせるアイデアは、あるテクノクラブでの光景から始まりました。そこでは、アナログレコードを回すクラシックなテクニクスのDJターンテーブル『SL-1200』のすぐ横に、私たちのランプが置かれていました。その光景を見て『なんて美しく調和しているんだ』と感動したんです。そこでテクニクスさんと何か一緒にできるのではないかと思い、2年前、私たちは連絡を取り、対話をスタートさせました」
「それから数ヶ月後、テクニクスさんから一般ユーザー向けの新しいターンテーブルをローンチするという話を聞きました。そこで、一般の人々が自宅でランプを灯し、家具に囲まれながら音楽を楽しむための、ホームユース製品を共同で展開しようと意見が一致したのです。土曜日の朝、自宅で家族と一緒に音楽を聴くような情景ですね。プロ仕様ではなく、とてもシンプルな日常のためのプロダクトです」(ダリオ・ライシェル)

300台限定「Technics SL-40CBTFH」(左)と200台限定「KAISER idell Luxus 6631-T」(右)。アジアおよびヨーロッパにて2026年10月より発売予定。
自身もDJであり、大の音楽好きでもあるライシェル氏。今回のインスピレーションの源泉について、さらに詳しくこう振り返った。
「アナログレコードのみを流す伝統的なクラブやカフェで、ヴィンテージや現行の『カイザー・イデル』がターンテーブルの傍らに置かれているのが、よくある光景だとある時、気づきました。その体験も今回の企画の大きなヒントになりました。また私自身、幼い頃から父が愛用していたテクニクスのターンテーブルに親しんでいたことも、きっかけの一つになっています」
テーブルランプのシェードとベース、ターンテーブルのボディのカラーは、バーガンディで統一されている。
「バーガンディは、私たちのコレクションに長年存在し続けてきた色です。オークやウォルナットといった家具の木目に非常によく合いますし、大理石などの石とも抜群の相性を見せます。私たちが扱う石の多くは天然のもので、グレーやブラウン、ホワイトといったトーンを持っていますが、バーガンディはそうした素材に自然と溶け込み、主張しすぎない絶妙な色なのです。また、テクニクスさんの既存ラインナップにはオレンジやブルー、ブラックが多く、これまでバーガンディのような色はなかったため、非常に新鮮に受け止めていただけたようです」(ダリオ・ライシェル)
デンマークのフリッツ・ハンセンと、日本のテクニクス。一見すると接点のなさそうな2つのブランドだが、コラボレーションを通じて多くの共通する価値観が見出されたという。
「私たちにとって最も重要だった共通の価値観は『時代を超越する製品』を目指しているという点です。私たちの製品はタイムレスで何十年と残り続け、人々が修理しながら大切に使い続けています。テクニクスさんは、今なおパーツを提供し続け、ユーザーが修理して長く愛用できる環境を整えている。技術革新が早く、使い捨てになりがちなオーディオやテクノロジーの世界において、これは非常に稀有で素晴らしいことです。製品の長寿命化(サステナビリティ)に対する強い信念を、テクニクスさんからもひしひしと感じました。そしてもう一つは、『クラフトマンシップと品質』です。ターンテーブルの製造プロセスの多くは、一般的な大量生産品よりもはるかに高度な手仕事と技術を必要とします。90年(ランプ)と50年以上(ターンテーブル)という気の遠くなるような年月、異なる領域で全く同じ情熱をもってモノづくりを続けてきた2つのブランドが出合えたことは、本当に奇跡的で素晴らしいことだと思います」(ダリオ・ライシェル)

「Technics SL-40CBTFH」には、ダブルネームのプレートが与えられている。
ヘンリック・エーレベルク・スティーンスガードCEOはコラボレーションについてこう語った。
「2つのブランドがそれぞれの分野で、長年にわたり同じ価値観を守り続けてきたという、その事実にこそ、今回の取り組みの真の美しさがあると感じています。私たちにとって、デザイン以外の領域に目を向けることは非常にエキサイティングな体験です。異なる要素を掛け合わせることで、これまでにない面白い価値を生み出せるのではないかと考えました。また、私たちは製品の開発計画を立てる際、常に既存プロダクトの組み合わせに着目します。空間をつくり上げる上で『意味のある要素』とは何か? プロダクトをいかに調和させ、シンクロさせるかを模索しているのです。今回のプロジェクトでは、音と家具が持つ物理的な美しさとの響き合いを探求したいと考えました。最高峰のクオリティを追求するブランド同士のコラボレーションには、大きな意義があると確信しています。今年はちょうど『カイザー・イデル』の90周年という記念すべき節目でもあり、まさに絶好のタイミングでした」(ヘンリック・エーレベルク・スティーンスガードCEO)
ターンテーブル「Technics SL-40CBTFH」はBluetooth機能を搭載しており、ワイヤレス対応スピーカーやヘッドホンへ手軽に音楽を飛ばせるカジュアルで扱いやすい設計となっている。オーディオ愛好家だけでなく、インテリア好きが日常に取り入れやすいプロダクトとして提案している点が実に見事だ。「SOUND CLUB」という企画は、ブランドの伝統と革新がバランスよく融合しており、単なるコンセプトで終わっていなかった。また、インテリアとしての両プロダクトの親和性の高さにも注目したい。「KAISER idell Luxus 6631-T」のアームが描く優美な曲線と、「Technics SL-40CBTFH」のS字型アルミトーンアームの曲線が調和。バウハウスデザインと日本のクラフトマンシップという、時空を超えた根源的な美しさの共鳴が非常に魅力的だった。
フラッグシップショップでは、nendoの「N02 リサイクル」シリーズやセリシエ・マンツの「モノリット」や人気の「セブンチェア」などのアップデートが発表された。

nendoの「N02 リサイクル」にパディング仕様が追加された。72,380円〜。

セシリエ・マンツによる「モノリット」には、ベースがプライウッドの仕様(写真)とシェルのアームを低くした仕様が追加された。271,480円〜。

人気の「セブンチェア」には、木製アームレストを備えたフルパディング仕様が追加された。174,680円〜。

「PK3」には、フロントパディング仕様が追加された。140,580円〜。
フリッツ・ハンセンは「3daysofdesign2026」において、既存コレクションへの細かなアップデートに加え、日本のオーディオメーカーとのコラボレーションという思いも寄らないサプライズを与えてくれた。日々の私たちの生活にやさしく寄り添いつつも、歴史に甘んじることなく新しい挑戦を忘れないというブランドの攻める姿勢が印象に残った。「3daysofdesign2026」全体を俯瞰しても、屈指の完成度を誇る展示の一つと言える。
お問い合わせ:フリッツ・ハンセン 東京 03‐3400‐3107