
INTERIORTaro Kiguma
デンマークの家具ブランド、ボーコンセプトが「BoConcept AW26 Collection」として新作を発表した。イタリア・ミラノを拠点に活躍するデザイナーのクラウディオ・ベッリーニによるブランド初の本格的なハイバックソファ「Paraggi(パラッジ)」や、ダイニングコレクション「Volterra(ヴォルテッラ)」だ。来日したクラウディオ・ベッリーニによるプレゼンテーションから、新作のバックストーリーを紐解く。

ハイバックソファ「Paraggi」。
今回のコレクションにおけるメイントピックは、ブランド初の本格的なハイバックソファ「Paraggi(パラッジ)」だ。昨年発表された「ミラノコレクション」に続き、デザインを手掛けたのはクラウディオ・ベッリーニ。彼の父は世界的な建築家・デザイナーであるマリオ・ベッリーニだ。クラウディオは「マリオ・ベッリーニ・アーキテクツ」で国際的なプロジェクトやコンペティションに参加し、1996年に自身のスタジオを設立。新作ではデンマークデザインの本質と、イタリアの伝統的な家具デザインの華やかさを見事に融合させている。2026年9月11日に開催された発表会では、デザイナー自身によるプレゼンテーションが行われた。

プレゼンテーションするクラウディオ・ベッリーニ。
クラウディオ・ベッリーニ:私が最後に日本を訪れたのは25年以上前のことでした。当時、父が「東京デザインセンター」をデザインし、そのオープニングのために一緒に来日したのです。今日、再び日本に戻って来ることができて光栄に思います。私がボーコンセプトと仕事を始めたのは3〜4年前のことで、デンマークのデザインとイタリアのデザインの融合を試みました。どちらも非常に深い文化を持っていますが、違いもあります。新作では、イタリアの伝統とデンマークの伝統との間に自然な調和を見出すことができました。その成果が、これらの新作です。
「Paraggi」は、イタリア・リグーリア州の海沿いにある非常に小さな村の名前です。今回のデザインにおける要件は「新しいハイバックソファをデザインすること」でした。私はハイバックソファで最も重要なのは、守られていると感じること、包まれていると感じること、そして安全だと感じることだと考えました。そこで自分の記憶の中からそれを感じる場所――家族の家があり、夏休みを過ごしたあの小さな村を思い出したのです。山と海に囲まれた素晴らしい村で、心からリラックスした時間を過ごしました。そのような感情を、新しいハイバックソファのデザインに反映したいと思いました。
クラウディオ・ベッリーニ:最大の特徴は、背もたれやアームレストの角度を非常に簡単に調整できる点です。角度を変えることで、ソファの上でリラックスしたり、眠ったり、食事をしたり、子どもたちと遊んだり、家族と過ごしたりできます。現代の多様な住空間に、このソファは柔軟に対応します。内部にはメカニズムとして金属製の可動ヒンジが入っています。ギア式ではなく摩擦を利用した可動構造(フリクションシステム)のため、ノッチ音もなく無段階で好きな角度にスムーズに固定することができます。

実際、背もたれとアームレストを倒してみると非常に滑らかに動きつつも、身体を委ねて体重を大きくかけてもしっかりと固定される絶妙な設計を実感した。これは伝統的なイタリア家具にあるような、高品質なハイバックソファのイメージと見事に重なった。また、登壇したボーコンセプトのデザイン&プロダクト・デベロップメント・ディレクター、クラウス・ディトレフ・イェンセン氏によれば、背もたれとアームレストは6,000回の可動試験をクリアしているという。耐久性が非常に高く実用的である点は、デンマークデザインの本質を感じさせた。
クラウディオ・ベッリーニ:また、「Paraggi」は多くのモジュールを用意しているので、ニーズや自宅の空間に合わせて自分だけの風景を作り出すことができます。私のイタリア人としての感性とスピリットが、このプロダクトに結実しています。柔らかく、少しルーズで非常に優しく、多くの人々をあたたかく受け入れてくれるようなハイバックソファになりました。

「Volterra」のダイニングテーブルとダイニングチェア。
もう一つ大きな新作は、ダイニングコレクション「Volterra(ヴォルテッラ)」だ。プレゼンテーションの途中からはデザイン&プロダクト・デベロップメント・ディレクターのクラウス・ディトレフ・イェンセン氏も登壇し、二人で熱くデザインストーリーを語った。

ボーコンセプトのデザイン&プロダクト・デベロップメント・ディレクター、クラウス・ディトレフ・イェンセン氏(右)。
クラウディオ・ベッリーニ:このダイニングコレクションは、イタリアの古都からインスピレーションを得てデザインしました。「Volterra」は非常に古い街で、遺跡には石が多く使われており、重厚で彫刻のような建造物にあふれています。この街は私に多くのエネルギーを与えてくれました。ダイニングコレクション「Volterra」は建築的で、古都の建築で見られるアーチを逆さまにしたような脚部の造形が特徴です。同時に、このテーブル自体が小さな建築作品でもあります。構造、柱、そして非常に薄い天板がとても美しくダイナミックな関係性を生み出しています。重厚な金属製のベースと薄い天板のコントラストも魅力です。このテーブルを起点として、同じデザイン言語を用いたサイドテーブル、コーヒーテーブル、サイドボードへとコレクションを拡張していきました。
また、このテーブルと良くマッチしながらも、より幅広いレイアウトやシーンで使えるダイニングチェアも作りました。ボーコンセプトにおいて、初のフルクッション張りのダイニングチェアとなります。フルクッション張りは重苦しく、野暮ったくなりがちです。その問題を解決するために、アームレストの有無にかかわらず、強度は維持しながらも視覚的に軽やかな印象になるようデザインしました。

「Volterra」ダイニングテーブル。 H75 x W105 x L235cm、449,900円〜。

「Volterra」ダイニングチェア。H78 x W60 x D59.5 x SH49cm、116,900円〜。

「Volterra」コーヒーテーブル。H38 x Φ99cm、161,900円〜。
クラウス・ディトレフ・イェンセン:テーブル下部の「Uの字」に注目してください。アフリカ南部で生まれた哲学「ウブントゥ(Ubuntu)」を表現しています。「ウブントゥ」とは「他者を思いやる」というつながりを意味する言葉です。同時に「Unique(唯一無二)」「Useful(役立つ)」「Urban(都会的)」という意味も重ねています。
クラウディオ・ベッリーニ:そして、私たちは「Uの字」が同時に「スマイルマークの口元」でもあることに気づき、このテーブルから発せられるポジティブなメッセージだと感じました。もはや「Volterra」は単なる家具を超え、人々が集う「場所」なのだと思っています。美味しい料理やワインを楽しみ、語り合い、人生を謳歌する場所なのです。
クラウス・ディトレフ・イェンセン:このテーブルを使うユーザーがテーブルを囲む時に構築したい関係性や良好なムードは、デザイナーとブランドが自分たちの関係性の中で持ちたいと考えているものと同じです。お互いを尊重することが最も大切だということです。それはまた、互いに高め合い、本音で主張し合えることも意味します。ひとつのプロダクトを完成させるまでにはタフなやり取りも非常に多くありますから、デザイナーとブランドが互いに良い関係性を持つことが極めて重要なのです。
ダイニングコレクション「Volterra」には、ダイニングテーブル、コーヒーテーブル、、サイドテーブル、サイドボードと複数のバリエーションがある。中でもサイドボードのデザインとテーブルのセラミック天板について、クラウス・ディトレフ・イェンセン氏が語ったコメントは、デンマークデザインの魅力である「機能性」や「タイムレスなデザイン」を強調していて印象的だった。

「Volterra」サイドボード。H74.5 x W229 x D51cm、466,900円。

「Volterra」コーヒーテーブルの天板。
クラウス・ディトレフ・イェンセン:ボーコンセプトの理念のひとつである「機能性」について語る際、このサイドボードが良い例になります。サイドボードの側面をカーブにするのではなく、扉自体をカーブにしています。これによって開口部が広がり、収納した物へのアクセスが格段に良くなって使い勝手が向上しているのです。扉自体を曲面にするのは複雑な構造であり、製品開発チームや工場にとって大きな挑戦でしたが、素晴らしい使い心地を実現できました。
また、「機能性」には「清掃・メンテナンスのしやすさ」という側面もあります。テーブルを囲んでいる時、赤ワインやチョコレート、油脂などさまざまな汚れの危険がありますよね。このテーブルの天板はセラミック製ですが、天然石に非常に似ており、模様の凹凸さえ感じられるほどリアルです。そして、セラミックは伝統的な天然石よりも耐久性が高く、手入れが非常に簡単です。鍵などで擦っても傷ひとつつきません。私たちはタイムレスなデザインを追求し、流行り廃りのない色を選び、末永く使える品質を提供しています。そうしたアプローチによって、私たちのブランドは平均的なブランドよりもサステナブルであると考えています。

発表会場では、新作のライティングコレクションが一同に美しい光を放っていた。
今回の発表会では、新しい照明器具も披露された。1つのシーリングライトで部屋全体を明るくしがちな日本の住まいに対して、北欧流の「部屋の各所に温かみのある照明を点在させ、光を重ねる」スタイルを提案。ファブリック、大理石、金属、セラミックというそれぞれの素材の個性を引き立て、使用していない時にも彫刻のように空間を彩るライティングコレクションだ。2027年以降の発売を予定している。