
INTERIORTaro Kiguma
HAYは、デンマーク・コペンハーゲンで6月10〜12日に開催された「3daysofdesign 2026」にて、ジャスパー・モリソンと家具で初のコラボレーションとなった「Pack Chair」や折りたたみ椅子の課題に挑んだ「Backflip Chair」などを発表した。発表内容のハイライトをまとめた。

会場はコペンハーゲンの歴史的なクリスチャンスハウン地区の運河沿いの「O-Overgaden」。元印刷工場でデンマークの現代美術界において最も歴史があり、実験的な試みを行っている非営利の独立系美術機関の一つだ。

会場入ってすぐにジャスパー・モリソンによる「Pack Chair」が大きく展示されていた。
ジャスパー・モリソンが初めて家具作りでHAYとタッグを組んだのは大きなニュースだった。新作の「Pack Chair」は、カフェやトラットリアで長く愛されてきた伝統的な木製チェアを、現代のニーズに合わせて再解釈した一脚である。コラボレーションのきっかけは、HAY共同創業者でクリエイティブ・ディレクターのロルフ・ヘイが、ロンドンにあるモリソンのスタジオの棚で小さな椅子の模型を発見したことだった。
「このような伝統的な椅子を現代的に捉え直せないだろうか。そして、フラットパックにして広く届けることはできないだろうか」(ロルフ・ヘイ)
ジャスパー・モリソンの作品の中でもとりわけ手に取りやすく、多くの人に行き渡りながらも品質や意図をいっさい損なわない一脚をつくりたい——そんな想いから開発が始まった。デザインが溢れている現代において意味があり、独自性を持つプロダクトを探求する中で、ジャスパー・モリソンによる「スーパーノーマル」の思想と、優れたデザインを広く届けようとするHAYの姿勢が融合。親しみやすさと確かな個性を併せ持つチェアとして結実した。

「Pack Chair 10」39,600円。

ロンドンのジャスパー・モリソンのスタジオにて、開発段階の資料など。
一見するとシンプルなフォルムだが、「Pack Chair」には高度な技術とサステナビリティへの意識が凝縮されている。座面と背もたれには、使用済み製品由来の再生ポリプロピレンを80%使用し、木繊維をブレンドすることで強度を高めつつ、やわらかな触感を実現した。そこに無垢のオーク材の脚が組み合わさることで、合成樹脂と自然素材という異なる質感が美しく調和している。
名前の由来でもある「フラットパック」という合理的な輸送仕様で手元に届き、組み立ては手軽に行える。特にオプションの生地張り仕様のシートカバーは、本体に組み込まれた溝にパチッとはめ込むだけで美しく収まり、自らの手で完成させる工程を楽しめる工夫が施されている。さらに各パーツは分解・修理・更新が可能な設計となっており、長期間使い続けることを前提として作られている。ラインナップはプラスチック座面と生地張り座面の2種を展開。豊富なカラーバリエーションにより、リビングはもちろん、ショップやオフィスなどのコントラクト空間にも自然に馴染むだろう。

「Pack Chair 11」64,900円〜。右上は座面に装着できる生地張り仕様のシートカバーだ。
「Pack Chair」は、一見すると何気ないチェアでありながら、ブランドのサステナビリティへの強いコミットメントと、デザイナーの経験、それを支える高度な技術が潜んでいる。「3daysofdesign2026」で発表された数々の作品の中でも今年を象徴する存在のひとつであり、何よりHAYらしい華とスター性を兼ね備えた一脚だ。日本でも10月30日より、HAY TOKYO、HAY OSAKA、HAY ONLINE STOREで販売が開始される。


グドムンドゥル・ルドヴィクによる折りたたみ椅子「Backflip Chair」。
折りたたみ椅子が抱える課題に向き合い、新たな価値を与えることに成功したのが、グドムンドゥル・ルドヴィクによる「Backflip Chair」だ。これまでにも数多くの折りたたみ椅子が存在してきたが、新作の魅力は、動作そのものが滑らかで、折りたたむ行為自体が楽しくなる点にある。
「折りたたみ椅子は、私にとってずっと特別に難しいテーマでした。機能性を優先すると、美しさや座り心地、あるいはその両方が犠牲になりがちです。折りたたみ椅子とは、そうした矛盾を抱えた存在なのです。補助的であったり、価値の低いものだと感じさせないプロダクトに仕上げることが今回の目標でした」(グドムンドゥル・ルドヴィク)
素材には美しい質感の無垢材を用い、背もたれと座面には成形合板を採用。背もたれをはじめとする各部に精緻な可動機構を組み込むことで、「広げる・たたむ」という一連の動作をストレスなくスムーズに実現した。実際、発表会場では多くの人が手に取り、その滑らかな操作感を体感していた。また、ブラックとナチュラルウッド仕上げの専用ウォールブラケットも用意されており、たたんだ状態のまま壁に掛けて美しく収納できるのも魅力だ。

グドムンドゥル・ルドヴィクのスタジオより。

「Mimi Sofa」シリーズ。
近年目覚ましい活躍を見せる、ロンドンを拠点とするデザイナーのフィリップ・マロウィンも新作を発表した。「Mimi Sofa」は、マロウィンが犬用のベッドを眺めていた際に浮かんだデザインだという。
「ふっくらとして体を包み込むような輪郭に、中央のやわらかなクッション。このソファは、まさにそうしたフォルムからインスピレーションを得ています。日曜日に丸一日過ごしたり、友人やパートナーと一緒に体を丸めて映画を観たりと、日常をゆったりと過ごすための場所です」(フィリップ・マロウィン)
上部に施されたステッチや、スカートの裾のように緩やかに広がる下部のシルエットなど、マロウィンらしいどこかチャーミングなディテールに注目して欲しい。日常使いのためのソファというコンセプトの通り、カバーは丸洗いが可能。1人掛けから3人掛けまでのサイズ展開に加え、オットマンもラインアップされている。

ノルウェーのデザイナー、アンドレアス・ ベルグソーケルによる「Chisel」ラウンジチェアが「Chisel Collection」として発展し、ファミリーとしての展開が発表された。新たにダイニングチェア、スツールや2種類のバースツールにテーブルが追加された。特にテーブルは脚付きラウンド、コラムベースのラウンド、長方形、伸長式と4タイプ10サイズという豊富な展開。素材もコレクション全体を通して、無垢材や合板、MDFと用途に応じて選択することができる。「Chisel」は、伝統的な木工道具の「ノミ」にちなんで名づけられており、角度をつけて面取りした脚部が「ノミ」の刃先のイメージに重なる。

「Chisel」シリーズのテーブルとスツール。

ドーシ・レヴィンによる「Dori Collection」。
アクセサリー新作として注目したいのは、ロンドンを拠点とするデザインデュオ、ドーシ・レヴィンによる「Dori Collection」。コレクション名は、ヒンディー語で「糸」を意味する言葉にちなんで命名された。「コットン、刺繍、日常使いといったインドの伝統に根ざした、異なるテキスタイル文化をHAYの世界へ持ち込むこと」とムンバイで育ったニパ・ドーシは語る。ベッドスプレッド、クッション、クッションカバーで構成され、カラーは深みのあるミッドナイトブルー、マルーン、グリーン。生地全体に施された格子状の繊細なステッチの色使いが美しい。

「Dori Collection」はリバーシブル仕様だ。