
INTERIORTaro Kiguma
カリモク家具はデンマーク・コペンハーゲンで6月10〜12日に開催された「3daysofdesign2026」に2つの企画で出展した。Karimoku Caseによるデンマークのオーディオブランド、DynaudioとのコラボレーションとMASの企画展『Japanmade Vol.1』への参加だ。
Norm Architectsが手がけたDynaudio(ディナウディオ)初のヨーロッパ常設フラッグシップストアにて、Dynaudioが誇るオーディオ技術とカリモク家具の手仕事を融合させたハイエンドなサウンドシステム「Opus One」が発表された。ホームシアターの核となる本機は、カリモク家具の職人の高度な技で組み込まれた72枚のオーク製フィンで覆われた、精緻な佇まいが目を引く。フィンはリスニングモードに応じて電動で可動し、内部に配された24基のドライブユニットから1500Wもの圧巻のサウンドを響かせる。セットアップの簡便さも魅力の一つだ。専門知識は不要で、付属リモコンのマイクが室内環境を感知し、音響性能を自動で最適化する。Dynaudioの卓越した音響技術と、カリモク家具によるクラフトマンシップが昇華した「Opus One」は、空間を彩るインテリアとしても唯一無二の存在だ。

フラッグシップストアを舞台に音や空間と素材が一体となり、中心に「Opus One」があった。Photo_Karl Tranberg Knudsen

「Opus One」13,000€〜。音の出るフロント部分に72枚のオーク製フィンが職人の手仕事で組み込まれている。Photo_Karl Tranberg Knudsen

Norm Architectsによる、Karimoku Caseの新作家具も同時に展示された。Photo_Karl Tranberg Knudsen

スモークドオーク仕上げの階段が美しい。Photo_Karl Tranberg Knudsen

企画展『Japanmade Vol.1』。会場には、名尾和紙の7代目であり和紙アーティストの谷口弦氏による「KAGO」シリーズをはじめ、LIGHT POTTERYによる信楽焼シェードのペンダント照明「Capsule」、1701年創業の福井県の老舗漆器メーカーとプロダクトデザイナーが手がけるブランド「SEKISAKA」、そして名古屋の植物性キャンドルブランド「sheep」などがセレクトされていた。
ヒノキの魅力を伝えるブランド、MASは、企画展『Japanmade Vol.1』にて新作を発表した。本展は、ライター兼プロデューサーのイェンス・イェンセンとデンマークのデザインスタジオ「OEO Studio」がキュレーションを担当。「日本のクラフトマンシップをデンマークで表現する」というコンセプトがMASの理念とも通底することから、同じ志を持つ4つのブランド(Naowashi、NEW LIGHT POTTERY、SEKISAKA、sheep)とともにMASの新作が展示された。本展は、単なる伝統的な日本のクラフトの紹介にとどまらない。デザインやものづくりに精通した海外のオーソリティーの目を通すことで、「歴史や伝統を軽やかにアップデートする、モダンな日本の作り手たち」に焦点を当てている。日本のクラフトの現在という時代感を反映した展示空間は、まるで東京のセレクトショップを訪れているかのように洗練されていた。

新作のほかにMASの既存ラインナップが一堂に展示されていた。

(右)「WK Sofa 01 2-Seater」297,000円。(奥)「WK Sofa 01 Bench 2-Seater」188,100円。(左)「WK Side table 01」76,450円。
ソファのようでもあり、ベンチのようでもある。これまでにあるようでなかった新しい家具が「WK Sofa 01」シリーズだ。デザイナーの熊野亘は、次のように語る。
「現在のソファは張りぐるみのデザインが主流ですが、MASというブランドにおいては、張り地と無垢材のバランスが非常に重要だと考えています。そのバランスを保ちながら、軽やかなソファベンチのようなものが作れないかと考えました。座面と背もたれの丸みは、座布団やどら焼きのようなふっくらとした形状からインスピレーションを得ています。日本の森の恵みから生まれるMASだからこそ提案できる、日本らしいソファを目指しました」(熊野亘)
熊野が語る通り、このソファはダイニングテーブルに合わせやすい高さでありながら、畳の上であぐらをかくような日本的な過ごし方にも心地よくフィットする。あえて用途を決め込まない「曖昧さ」を持たせたデザインは、ライフスタイルが多様化した現代において、柔軟な選択肢としてその価値を高めている。イタリアの大型ソファのように深く身を委ねるスタイルとは異なり、空港などの公共空間で腰を掛け、次の動作へスムーズに移るような軽やかな使用シーンが想定されている。

WKシリーズはソファ1・2・3シーター、ベンチ2・3シーター、そしてデイベッドの6種類の展開。

「DR Light 01」シリーズ。縦のタイプ「V1」と「V2」、横のタイプ「H1」と「H2」の4種類。
ブランドとしての挑戦を感じさせたのが、ダニエル・リーバッケン(Daniel Rybakken)がデザインを手がけた照明「DR Light 01」シリーズだ。家具ブランドが異分野である照明へと踏み出した背景には、確固たる理由が存在した。リーバッケンは「ヒノキの美しく繊細な木目と色彩を、光の力で最大限に表現したい」と考えたのだ。MASのクリエイティブディレクターを務める熊野亘は、開発のきっかけをこう振り返る。
「ヒノキはこのブランドにおける象徴的な素材です。その魅力をいかに引き出すかを追求する中で、光を当てることで木肌の美しさが一段と引き立つことに着目しました。『これをポータブル照明として実現できれば、ブランドの世界観がさらに広がるはずだ』というダニエルからの提案を受け、照明の開発がスタートしたのです」(熊野亘)
そして、この構想を具現化するうえで不可欠だったのが、ポータブル照明のトレンドを牽引するアンビエンテックの技術力だ。
「ヒノキの持つ自然な表情を極限まで美しく見せるため、光源には高演色性のLEDを採用しました。また、このデザインにはバッテリー内蔵構造が馴染まないため、新たにUSB PD規格の給電システムを独自開発し、USB Type-Cからの給電方式をとっています。このシステムを採用したことで、照明でありながらカリモク家具の工場での製造が可能となり、かつグローバルな展開もしやすくなりました。タッチセンサーによる調光機能も備えています」(アンビエンテック・久野義憲)

電源を入れると、ヒノキの美しい木肌が楽しめる。
「DR Light 01」シリーズは、LEDの光源によってヒノキの美しい木目を浮かび上がらせるだけでなく、消灯時においても精緻なプロダクトとしての佇まいを見せる、極めて象徴的な照明だ。既存のインテリア空間にアクセントとして加えることで、その真価が発揮されるだろう。また、木工家具の深い伝統を持つデンマークでのプレゼンテーションにおいて、最新のテクノロジーを掛け合わせて「日本らしさ」を提示したことには大きな意味がある。ブランドが掲げる「単なる家具ではなく、日本の森と木工文化を未来へつなぐ器として、クラフトと産業の間に新たな価値を築く」という理念を具現化したプロダクトだと実感させられた。

「SF Basket 01 L」 60,500円(W650 x D350 x H260)。ほかにSサイズ 55,550円も。
デザイナー、藤城成貴による収納バスケットも披露された。無垢材のフレームに平紐を格子状に編み上げたネットを組み合わせたもので、美しいラインとクラフト感の両面を楽しめる。ネット部は取り外して洗濯も可能で機能的だ。
今回のカリモク家具の2つの展示は、日本のクラフトマンシップへの造詣が深いデンマークの地においても、見応えと説得力のあるプレゼンテーションとなっていた。同じカリモク家具でありながら、ミラノデザインウィークやミラノサローネでの発信とは一線を画すアプローチをとっていた点が興味深い。こうした緻密な描き分けには、長年の海外出展を通じて培われた同社の膨大な知見と経験が見事に結実していた。